MMDS大阪大学 数理・データ科学教育研究センター
Center for Mathematical Modeling and Data Science,Osaka University

デフォルト率と回収率の負の相関を考慮した期待損失

吉羽 要直 (日本銀行 金融研究所)

大証寄附研究部門セミナーシリーズ 第9回

デフォルト率と回収率の負の相関を考慮した期待損失

吉羽 要直 (日本銀行 金融研究所)

デフォルト率と回収率(担保価値)には景気を通じた負の相関があるといわれている。こうした相関を考慮したモデルとしてはPykhtin [2003]のモデルが知られているが、満期でのみデフォルトを判断する非現実的な設定になっている。本研究では、この点を踏まえ、デフォルト率については外生的なデフォルト強度過程で考え、デフォルト強度過程と担保価値過程に負の相関がある信用リスクモデルを構築し、期待損失やn次モーメントを解析的に評価する。このようなモデルは、Kijima and Miyake [2004]でも分析されているが、そこでのモデルではデフォルト強度が負になりうるという問題を有していた。本研究ではこうした点を踏まえ、以下の4つの条件を同時に満たす評価を行った。
(1) デフォルトは貸出満期までの間、デフォルト強度過程でいつでも生じうる。
(2) デフォルト強度と担保資産の変動には負の相関がある。
(3) 損失の期待値、分散、 n次モーメントは解析的に評価できる。
(4) デフォルト強度、担保資産価値は非負性を保つ。

具体的には、デフォルト強度に対してはCox-Ingersoll-Ross型の平方根過程を想定し、担保価値は幾何ブラウン運動に似た拡散過程を想定する。デフォルト強度と担保価値の変動をもたらすブラウン運動には負の相関を仮定する。そのもとで、期待損失の評価をDuffie, Pan and Singelton[2000]で示された「拡張アフィン形式」に帰着させ解析解を得る。また、得られた解析解から、担保による期待回収額は、担保価値の無条件期待値と「相関に応じて測度変換された」生存確率の変化の積に整理できることを示す。

講師: 吉羽 要直 (日本銀行 金融研究所)
テーマ: 大証寄附研究部門セミナーシリーズ 第9回
日時: 2009年10月09日(金) 16:20-17:50
場所: 大阪大学基礎工学研究科I棟 204
参加費: 無料
参加方法:
アクセス: 会場までのアクセスは下記URLをご参照ください。
http://www.es.osaka-u.ac.jp/access/
お問い合せ: 本ウェブサイトの「お問い合せ」のページをご参照ください。