実質ベースでの安定価値尺度──グローバルニューメレールの理論と資産運用への応用
菅野朋典(東京大学大学院工学系研究科)
大阪大学 数理・データ科学セミナー 金融・保険セミナーシリーズ 第152回
実質ベースでの安定価値尺度──グローバルニューメレールの理論と資産運用への応用
菅野朋典(東京大学大学院工学系研究科)
近年、法定通貨の購買力変動が拡大し、価格(名目価値)を基準とする経済指標や資産運用の枠組みでは、実質的な価値安定性を十分に評価できない状況が顕著になっている。本研究では、金融市場における大規模価格時系列を用い、通貨や資産の「交換価値」を統計的に推定することにより、実質ベースで安定した価値尺度(Maximum Likelihood Value; MLV)を導出する新しい理論的枠組みを提案する。
本理論は、価格=(アセットの交換価値)/(通貨の交換価値)という基本関係を仮定し、観測価格から逆算的に交換価値を最尤推定するものである。推定過程では、無裁定条件および一物一価の法則を前提に、価格時系列の共分散構造を動的に更新しながら、価値時系列を逐次的に算出する。この結果得られるMLVは、分散最小ポートフォリオのリターンを理論的に不変にする唯一の価値尺度であり、「最も安定なニューメレール」として数理的に定義される。
講演では、まずMLVモデルの数理的導出と推定アルゴリズムを紹介し、つぎに実データ(為替・株式・コモディティ等)を用いた数値検証を通じて、その安定性と相関構造のロバスト性を示す。また、MLVが可能とする実質ベースのパッシブ運用や、グローバルステーブルコイン設計などへの応用事例を取り上げ、経済価値尺度としての新たな可能性を議論する。
| 講師: | 菅野朋典(東京大学大学院工学系研究科) | 
|---|---|
| テーマ: | 大阪大学 数理・データ科学セミナー 金融・保険セミナーシリーズ 第152回 | 
| 日時: | 2025年12月01日(月) 16:50-18:00 | 
| 場所: | 大阪大学豊中キャンパス基礎工学部J棟6階 J617 | 
| 参加費: | 無料 | 
| 参加方法: | |
| アクセス: | 会場までのアクセスは下記URLをご参照ください。 https://www.es.osaka-u.ac.jp/ja/accessmap/index.html | 
| お問い合せ: | 本ウェブサイトの「お問い合せ」のページをご参照ください。 | 
