MMDS大阪大学 数理・データ科学教育研究センター
Center for Mathematical Modeling and Data Science,Osaka University

バスタブ渦発生の物理と数理

水島 二郎 (同志社大学 理工学部 機械工学科)

大阪大学 数理・データ科学セミナー 数理モデルセミナーシリーズ 第12回

バスタブ渦発生の物理と数理

水島 二郎 (同志社大学 理工学部 機械工学科)

容器中に満たされた水を排出口の栓を抜いて排水するときには水面近くに渦ができます。この渦は台所のシンク・洗面台のボウル・風呂桶などいろいろな容器中で見られますが,風呂桶の水を排水するときにできる渦を代表として,バスタブ渦と呼びます。セミナーではバスタブ渦が発生する機構・流れのパターン・発生条件について話します。このような日常的に観測される現象については多くの人が各個人のイメージを頭の中で描いており,言葉づかいもそれぞれの人によって異なるので,物理学や数学の立場から理論的に研究するときは難しい問題に直面します。渦という言葉も定義が明確ではありませんので,流体力学で明確に定義される渦度・循環・角運動量などとの関係から渦を考えていきます。バスタブ渦の発生は系がもつ対称性と密接に関係していて,対称性によって渦ができる機構が異なります。特に興味がある系は容器が長方形断面をもち,排水口が対称軸の上にある場合です。このときには流れの不安定性によって渦が生じます。この現象は少数力学系の理論ではピッチフォーク分岐で表される自励系になっています。
 地球の自転が渦の回転方向に及ぼす影響については,普通は台風などの数100kmくらいの長さスケールの渦でないと地球の自転の影響は現れません。しかし,ピッチフォーク分岐は系の不完全性あるいはゆらぎに対して構造不安定なので,容器が完全な面対称性をもっていると仮定できれば,地球の自転の効果によりバスタブ渦は北半球では反時計回りとなるという結論が得られます。もちろんこれは純理論的で理想的な状況での結論で,実際には容器の形状・排水口の位置・水の注入の方法で渦の回転方向は決まります。

講師: 水島 二郎 (同志社大学 理工学部 機械工学科)
テーマ: 大阪大学 数理・データ科学セミナー 数理モデルセミナーシリーズ 第12回
日時: 2016年12月06日(火) 16:30-18:00
場所: 基礎工学研究科 J棟一階セミナー室
参加費: 無料
参加方法:
アクセス: 会場までのアクセスは下記URLをご参照ください。
http://www.es.osaka-u.ac.jp/access/
お問い合せ: 本ウェブサイトの「お問い合せ」のページをご参照ください。