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Interview 03

Interview 03
松原 繁夫 特任教授

大阪大学 数理・データ科学教育研究センター
情報科学ユニット / ユニット長
どんな研究をされているのですか

人工知能の研究をしています。その中でも、マルチエージェントシステムと呼ばれる分野を専門としています。社会には複数の人がいて、お互いに情報などをやりとりしながら社会を回している。そういった人々の協調や競争の様子に着目して、そこがうまく動くようにはどんな仕組みを作ればいいか、というような研究をしています。

たとえばインフレの指標を予測するとしましょう。機械学習による予測は、過去の値動きなどのデータに依存します。その時の財政政策はどういうものだったか、政府トップの人柄はどうだったかなどのデータは、今の機械学習ではうまく入力できません。
では人を連れてきて、機械学習コンピューターに協力してもらえば予測精度が上がるのではないか、どんなふうに人の意見を取り込むと多様性を生かした良い予測ができるのか、などを研究しています。

教育はどんな科目を担当しておられるのでしょうか

MMDSでは全学部を対象に多くの科目を提供しています。例えば前期に開いた「情報と社会」という授業は、学部1、2年生が対象です。情報系だけでなく、経済や法学、外国語学部などの学生も対象にした、いわゆる一般教養の科目です。理系文系という区別はあまり好きではないですが、プログラムを書く機会がないような専攻の学生でも、就職して社会で活躍するときに、情報システムを開発する人とうまくコミュニケーションが取れるような力を身につけてほしい。そのきっかけになるように、世の中の様々なところでどんな情報技術が使われているか、社会との接点に気付いてもらうねらいです。
講義のうち4回はワークショップをしています。「オンライン授業を改善してください」といったテーマについて、2人組で議論したり、別の3人チームでさらに改善の視野を広げたりし、プレゼン資料を作って発表する取り組みをしています。

教育の対象は、阪大の学生さんだけなのですか

MMDSは、阪大の以外の大学の学生や社会人向けの教育にもかかわっています。その一つとして、一般社団法人数理人材育成協会 (HRAM) を通じて学生や社会人向けのe-Learningの科目も提供しています。
社会人の方はもちろんですし、今学部生の方でも、自分の所属している大学や学部では、ちょっと詳しく知りたいテーマがあっても、それを学べる講義が無い、という時にe-Learningで勉強してもうらことが可能です。
阪大の学生なら、MMDSが学内向けに開講している授業に加えて、さらにHRAMのe-Learningで知識を深めることもできる。それぞれの人の状況に応じた学習の仕方が選べます。
基礎から実践レベルまで、科目は幅広く提供しています。社会人向けの講義で気づいたことを学部1年生向けに反映して改善するなど、シナジー効果も期待できそうです。色々混ざっていることは活気があって悪くないと思っています。科目ごとのつながりをもう少しわかりやすくして、「深めるには次はこの科目」というような位置関係を見えやすくしていきたいと考えています。

インタラクティブマッチングとはなんですか

MMDSが幹事機関になっているデータ関連人材育成プログラムD-DRIVEでは、インターンシップを希望する学生と企業をアレンジする「インタラクティブマッチング」を年2回開いています。

最近はコロナ禍のため対面とオンラインを併用した開催です。学生と企業の担当者が顔をそろえて、最初に学生が1分間、どんな研究をしているか、どんなテーマに興味があるかプレゼンします。次に企業ごとに、インターンシッププログラムの内容や、会社の仕事について説明があり、その後は企業の担当者の待機するブースを、学生が自由に回って話を聞くという形です。
これまでに開催したインタラクティブマッチングには、阪大を含め全国から多くの大学院生が参加し、インターンシップの実現につながっています。企業も多数参加しており、分野は情報系だけでなく、いろいろな業種が関心を持っています。
学生にとっては、これまで個人個人で探していたインターンシップ先を、効率よく検討できます。選択肢に入っていなかった企業でも、このような場でたまたま話を聞いてみると、自分のやりたい事と非常に近いことをやっていることに気づけるかも知れません。
またインターンシップは「本物のデータ」に触れられる貴重な機会です。データサイエンスはデータが命ともいわれます。しかし大学の中で扱えるのは練習用のデータが多く、実際の現場が持つデータとは違います。たとえば工場の中はデータの塊なわけです。蓄積はされているけれど十分使われていない。分析すればもっと生産効率はあがるのに、そこまで手が足りていない。
そんな環境にある企業側は、インターンシップで優秀な学生に会えて、彼らの持つ最新のデータサイエンスの手法を目の当たりにできるのがメリットになります。データサイエンスを扱える人は、まだ絶対数は足りていない。大手企業からスタートアップまで、会社のHPを見ただけではわからない、もう一歩中身がわかるような仕掛けで、学生と企業のミスマッチを減らせます。参加者のアンケートでも、9割ぐらいの人に良かったと評価してもらっています。

2022年1月インタビュー:新型コロナウイルス感染症対策のもと取材・撮影を行いました。