MMDS魅力発信サイト

Interview 02

Interview 02
高野 渉 特任教授

大阪大学 数理・データ科学教育研究センター
データ科学ユニット / ユニット長
どんな研究をされているのですか

体操の技を認識して演技を自動で採点したり、介護施設や保育施設で、高齢者や園児の様子を撮影すると、体の動きをデータにして文章に変換し、介護日誌や保育日誌をつくったりできる、そんな人工知能を作ろうと研究しています。
まずは人の動きをきちんと正確に計測するところから始めます。手足や全身の関節が、それぞれどれだけ曲がっているかなどのデータを集める。機械学習などを使って、そのデータを文章に変える作業も必要です。

そんなデータをたくさん蓄えておけば、人の動きを人工知能に見せると「あ、この動きは過去のこの動きに似ているな」と認識することができます。また、蓄積したデータを使って人型ロボットを動かせば、人間らしい動きを真似ることもできます。
ロボットの動きは毎回厳密に同じように再現され、カチッと動きます。一方、人の動きは、ただ歩く動作にしてもそのたびごとに微妙に違ってばらつきがある。その違い、ばらつきを、統計の数学やデータサイエンスを使って橋渡しして、人工知能で取り扱えるようにするわけです。

膨大なデータを効率的に処理できるデータサイエンスは、統計学など比較的伝統ある学問に立脚しているので、いろんな定理やアルゴリズムなど使える道具はたくさんそろっています。そんな既存の道具をうまく組み合わせて、人の動きを認識して文章にしたり、ロボットの制御に使ったりできるようにしたい。そんな研究分野です。

教育の方面ではどんなことをされているのでしょうか

たとえば担当している一つの「文理融合に向けた数理科学」という科目は、文系、理系の幅広い学部の学生向けに、データサイエンスや人工知能などの初歩に興味を持ってもらうためのものです。多くの学生に受講してもらい、すそ野を広げるねらいです。
2022年度は週に8コマ開講します。月曜の5限にもあるし火曜の4限にも5限にもある、という形で開いておけば、必修科目と重ならない、どこか都合の良いところで選択してもらえるでしょう。
e-Learningコンテンツも作って、決まった授業の時間でなくても授業内容を視聴できるとともに、e-Learningの最後にクイズなども作って理解度を確認できるようにし、学習効果を高める工夫もしています。動画サーバーに授業の内容をあげてあり、それを見てもらうスタイルですので、私が毎週8回必ず教室に行って教えているわけではありません。阪大には1学年約3300人いますが、1400人ぐらい受講してくれるといいなあと考えています。

授業では、どんな工夫をされていますか

「文理融合に向けた数理科学」では、国政調査などのデータを使って、簡単な解析の実習もしています。各都道府県の1世帯当たりチーズにいくら消費しているかと、ワインの消費の関係性を解析すると、「チーズに多くお金を使ってる県は、ワインにもお金を使っている」という嗜好性が見えてくる。そんな形で具体的に手を動かしてデータを解析し、結果を可視化するところまでやって、「自分でもなにかできそうだな」と経験してもらうことを心がけています。

私も統計の授業を大学時代に受けましたが、抽象的な話になりすぎて、どう役に立つのかわからないと、面白くありません。学部、大学院博士前期課程では機械系の精密工学を専攻しました。制御やプログラミングなども授業がありましたけれども「何が面白いのか」と思って避けていたほどです。
修士を終えて自動車会社に就職して、運転支援システムに取り組んで実際に車を動かしてみると、人工知能や制御も面白いものだと初めて実感しました。そこで大学院に戻ってロボットの研究室に入り、学位をとりました。
数学を専門とする教員がデータサイエンスを教えている大学も多いですが、具体的に何か見えるようにしてあげて、学生の好奇心を刺激するのが、私のようなキャリアを持つ教員の役割の一つだろうと思っています。
データサイエンス系以外の学科にいる学生が、私の授業を受けた後に「こういう世界があるんだ」と面白さを感じて、私の他の授業を聞きにきてくれたり、「どういう授業を受けたらいいか」「どんな本を読めばいいか」と質問してくれることがあります。そういう学生が増えてくれれば「やったな」という感じですね。

学部の教養教育からさらに広がりも考えておられるのですね

2021年は高校2年生にも授業をしました。高大接続の一環です。土曜日に3時間×5回くらい、2単位分みっちりで結構な内容ができます。大学の1年生対象と同レベルの内容に、高校2年生までで学習している数学の話を盛り込みます。「データサイエンスで高校の数学がこんなふうに使われている」と見えるように、大学の授業を少し手直ししています。
他の大学でも、データサイエンスを教えたいところはたくさんありますが、教えられる教員が限られているのが悩みのようです。そこで、MMDSが作っている授業コンテンツを地方の大学などでも使ってもらうような取り組みも進めています。
阪大内では、1年生向けの授業などは充実しつつあり、実習や演習もそろってきました。次はもう少し学部上級生や大学院生向けにも、授業や研究サポートのような形で関わっていけないか検討中です。他の専攻、例えば生物系の博士課程の学生を、MMDSに数カ月ぐらい受け入れて、データサイエンスの面から研究を手伝ったり、指導したりできるように考えています。

2022年1月インタビュー:新型コロナウイルス感染症対策のもと取材・撮影を行いました。